『われら中年ちょっとだけ探検隊!』~富津の愁い 後篇
「コンビニ食事最高説」を主張し、焼酎を飲んでいるにもかかわらず、サンドイッチに食らいついている珍辰が、ふと黙った。
「珍辰、どした?」
「星がさ、キレイだよね」
「そだね」
「なんかさ、夜が深まるにつれて、お星さまがだんだん大きくはっきりしてきたよね♪」
「・・・・・」
「ね、屁散人、夜の海でも見に行かない?」
珍辰の瞳に、少女マンガのような星が生まれて、ピカピカと光ってる。
こういう時は、いったいどーゆー反応をしたらいいのか。
「え~っと、夜だもんなぁ、海に行ってもなーんも見えないんでなくね?」
「そんなことないよ~、屁散人となら、なんでも見えちゃうよ~♪」
「あのよ~、その言葉遣いヤメテくんねかね」
「いーじゃないのぉー、二人っきりなんだものぉ♪」
「そのほら、ぉ、って小さく言うのヤメテくんねかね。なんか変な感じになっからよ」
「ホントはね、屁散人のこと、大好きだったのぉ~♪ 前々から言おうと思ってたんだけど、やっと二人きりになれた今、もう、だれにもあんたを渡せないゎ!」
「げ、やめれ、やめれ~~~~っ! そ、そんなとこ、舐めたらあっかん~♪ 舐めたら圧巻~♪」
というところで目が覚めた。
午前4時20分である。
ようやく明るくなってきた松林は、まぁ、なんとカラスと四十雀のうるさいこと、うるさいこと。
まぁ、それはいいとして、昨夜、珍辰に、
「明日はどーすんの?」
と聞いた。
「ぜ~んぜん考えてない」
という。
旅を全うするには、それだけの、
旅の構成力
というものが必要なのである。
それがあってこそ、充実した旅が楽しめるのだ。
んなのに、珍辰の構想は、2日間の旅でありながら、1日目に、
キャンプ地に着けばいい
というだけのものだった。
2日目の計画は全くなく、1日目にキャンプ地に着けばいい、というだけの構想で2日間を乗り切ろうとしたのである。
これは、構想という段階なんつものではなく、単なる、
思いつき
に過ぎない。
珍辰は、たった二日間の旅なのに、後半の一日は、はなから捨ててるのである。
隊長がこれでは『われら中年ちょっとだけ探検隊!』も吸いたい・・・衰退するはずである。
テントをたたみ、キャンプ場を出たのは、午前9時前であった。
これからどこへ行くのか、って?
帰る
のだった。
5時間半かけて歩き、足の裏に豆を作ってやって来たにもかかわらず、潮干狩りするわけではなく、地元の魚や野菜を食うわけでもなく、コンビニ弁当食べてテントで寝ただけである。
これなら「5時間半かけて歩き、足の裏に豆を作ってやって来た」という部分は全く不要であり、あとは自分ちで出来ることだ。
バス停に行くと、ちょうど良くバスが折り返すところだった。
んが、1時間に1本のバスの出発は9時45分で、まだ小1時間あったので、潮干狩りを見に行った。
すかそ、潮はまだ岸壁近くまで来ているので、開門は10時半。
たくさんの人が長蛇の列を作って座って待っていた。
後からも人が続々と詰め掛けて来る。
これらの人々を見たことが、今回の旅の唯一の、
観光
であった。
バスでJR青堀駅に出た。
「がらがらの内房線に乗ってよ、海見ながら、ちびりちびり飲もうじゃんけ」
という計画は、駅前に店がな~んもないのであっけなく、沈没。
電車は、がらがらではなく、立っている人がいる。
珍辰は、一瞬の隙を見て、自分だけ座っている。
人に勧める、っつことを知らないのだ。
屁散人は、んだから、浜金谷まで立ちっぱなしである。
電車だと、あっという間だった。
20数分で着いてしまう。
昨日の5時間半はいったい何だったのだろう。
「こうしてみると、電車って早いなぁ」
珍辰は、わざわざここまで電車の早さを確認しに来たのだろうか。
そのために5時間半も歩いたのだろうか。
金谷のフェリー乗り場で、珍辰は、
「これですよ~、これこれ。千葉に来たらこれ買わなくっちゃぁ♪」
といって買ったのが、
濡れせんべ
であった。
屁散人は、
塩ゆで落花生
を買った。
われわれの今回の旅の収穫は、これだけである。
濡れセンベと塩ゆで落花生を買うだけのために、千葉まで来たのだった。
フェリーを待つ間、缶ビールを1本飲んだ。
まだ午前11時前である。
フェリーに乗ってまた缶ビールを1本飲んだ。
こうなるともう、歯止めが効かない。
久里浜駅近くの焼き鳥屋で、今度は激しく飲んだ! ←ここは、実に、んまかった!
思いっきり飲んだ。
反省しないわけにはいかない。
酔わないわけにはいかない。
「んなろーー、おっさんをバカにすんなよ!」
「そーだ、そーだっ!」
「好き好んでおっさんになったんじゃねーぞっ!」
「んだ、んだぁっ!」
「みんななるんだ、おっさんによー!」
「若い姉ちゃんだって、婆ぁになるんだ、こんにゃろーーーっ!」
「いいぞ、いいぞ、もっと家・・・言えーーっ!」
「たまには、こっちを向いてくれぇーっ!」
「え?」
「お願いだから、こっち向いてぇ~~~!」
と叫びつつ、おっさん二人は、真昼間の町をよろよろよろよろ、帰宅の途についたのだった。
(おわり)
昨日のお貯め(目標金額:69,800円! TEACのオーディオを買うのだ!)
・投入~♪=272円~♪
・あと~♪=28、671円な~りぃ~♪
雑木林の中の富津キャンプ場の朝。カラスと四十雀がうるさかったなぁ~♪
われわれのテントはすでに撤収してあるから、ちと広く見えるね。
2010-05-04 05:39
nice!(6)
コメント(2)
最後のお酒が美味しかったらそれで良い。それがすべてでせう。
by あおばばばぁちゃん (2010-05-04 06:30)
→あおばばばぁちゃん
まぁ、終わりお酒が、んまかったから、そうといえばそう。
んだけどなぁ、んまい刺身とか、ホタテとか、食いたかったぁ~♪
by 屁散人 (2010-05-04 12:20)