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『われら中年ちょっとだけ探検隊!』~富津の愁い 前篇


終わった。

のだった。

珍辰との地獄の4日間が終わった。

のだった。

最初の珍辰との2地獄は、先日書いた。

もうこれだけで、屁散人の精神と肉体はボロボロなのに、まだ続いたのだった。

これから書くのは、珍辰との後半の2地獄である。

涙なくしては語れない。

鼻汁飲みながらでなくては書けない、悲劇の喜劇物語なのだった。



おとといの5月1日、京急久里浜駅で珍辰と待ち合わせをした。

久里浜からフェリーに乗り、金谷で下船、そこから富津(ふっつ)まで歩き、そこでおっさんキャンプをココーというのである。

金谷から富津のキャンプ場までは、20キロだ、と珍辰はいう。

まぁ、それであるならば、実質4時間ほど歩けばよい。

急いで歩く必要もない。

ただ、屁散人には不安が一つあった。

前日に、いつものように歩いて横須賀中央まで出掛けたのだが、帰るときに、腰とふくらはぎと左足首が痛くなり、2度も立ち止まらなければならなかった。

どうも靴のかかとが異様にすり減り、その関係で足腰に負担がかかり、痛み出したのだと思われた。

もうこの靴をはくわけにはいかない。

20キロなんか足腰がもつわけがないのである。

幸運にも、去年、この靴と一緒に買った靴があった。

まだ一度も履いてない、新品である。

長い距離を歩く時は、普段はき慣れた靴をはいて出掛けるのが大原則である。

新品の靴だと、豆が出来たり、足首を痛めたり、極端になると歩けなくなってしまうほど、足腰を痛める。

んが、もう、そんなこと言ってられない。

新しい靴を履くことにした。

んでもって、履いた瞬間、


     違和感だらけ


であった。

親指の付け根に紐が当たる感じがあるし、靴下が靴の中で滑る感覚がある。

小指が靴に当たる。

これで、


     お豆ちゃん、間違いなし!


という予約が取れた。

屁見庵を出る時から、嬉しい予感に、もっこりが膨らむ。


「諸君っ!いいかっ・・・」

「もう、いいんでなくね?屁散人しかいないんだからよ」


前の珍辰なら、ここで、


「うっさいっ!珍辰が隊長なのっ!これから命令下すのっ!」


と鼻の穴おっぴらいて息まくところだが、『われら中年ちょっとだけ探検隊!』の隊員たちに、


      隊長としての資質皆無!


と診断された珍辰は、どうにも弱気であった。


「あい・・・」


と悲しげな笑みを浮かべて、すぐに引き下がったのだった。

久里浜からのフェリーは、ゴールデンウィークの客でいっぱいだった。

デッキからは、これから向かう富津岬が沖に長~く横たわって見えた。

春がすみである。

すべてが、ぼぉ~っと霞んで、うらうらしている。

デッキの椅子に腰かけて、まずわれわれが食べたのは、


     都こんぶ


であった。


     旅=都こんぶ


という図式が、われわれの年代には、懐かしく激しく刷り込まれているのだ。


     旅=冷凍みかん


という公式もあるが、残念ながらフェリーには冷凍みかんがなかった。

おっさん二人は、都こんぶをちゅうちゅう舐めつつ、これからの行く末に思いをはせる。


「富津は、潮干狩りのメッカだから、そこで捕ったアサリでよ、一杯やるっつのはオツでげすよん」


と珍辰は言う。

なるほど、アサリの網焼きなんつのもいいかもしんない。


「そいでもってよ、かあいー姉ちゃんと仲良くなって、ほら、一杯どうよ、あら~ん、あたしたちもいただいちゃっていいのかしら? いーともさー、ほれ、もっとこっち寄って、んなぁ、遠慮なんかいらないぜ。もちっとこっち、もちっとこっちおいでってばぁ、がひひ♪」


珍辰の顔がかすんでみえる。

航海35分で、対岸の房総半島、金谷にフェリーが到着。


「あすこにコンビニあるから、あすこでメシ仕入れようぜ」


と珍辰。


「せっかくよー、こっち来たんだから、コンビニで買わなくったっていいじゃんけ」

「いいのっ!旅に出たら、コンビニに限るのっ!」


っつことで、コンビニで、コンビニおむすびとコンビニサンドを購入。


     全国どこでも同じ味昼食


を仕入れたのだった。

歩き始めて30分ほど経ったころ、水眠亭から電話が入った。

水眠亭は屁散人のブログを見て、われわれが今日キャンプに行くことを知ったのである。


「水眠亭、いいぜぇ~♪ 海が青々と広がり、大学生の姉ちゃんと一緒なんだからよ」

「え~~っ!」

「乳もみもみしながら歩いてんの♪」

「あのね、んなすぐバレるようなことは言わないの」


水眠亭は、桟敷を外したのだという。

今日から、お客さんが連日来るので、大変らしい。

が、なんで水眠亭はそんなことを言うために今、電話かけて来るんだろ。


     なぜ今?


なんだろう。

小一時間歩き、竹岡の堤防で、トビの攻撃を恐れながら昼食。

左足首が痛む。

珍辰がコンビニで貰って来た地図を見ると、どうも20キロなんてもんじゃなさそうである。

30キロはあるのではないか。


「ま、そんなにはないでしょう。25キロっつとこでしょね♪」

「行くとき、20キロって言ってたじゃんか」

「変更というのは、常に付き物の出来物でありまして、変わるというのは、諸行無常の鐘が鳴る、鐘がなぁ~るぅ~♪」


千葉の道というのは、こーいっては何だけど、はなはだ単調なのである。

時折、おおっ!という景色に出遇うくらいで、とろとろだらだら、といった道が続く。

風景も、だら~っと広がる感じで重いのだった。

んだから、20キロの道でさえ、30キロくらいの感覚になってしまう。

それが25キロになったということは、35キロ~40キロくらい歩く感覚になる。

とうじぇん、気分も重くなり、気力が萎え、珍辰と歩いていることに、激しい後悔を覚えるのだった。

1時間ごとに休憩を入れる。

歩いても歩いても、富津岬は沖に長く横たわっているばかりで、少しも近づいてくれない。


「痛てててて、豆が出来た」


と、珍辰。

屁散人も両足に豆が出来た。

右足首は、以前痛んだままだ。

上総湊(かずさみなと)を過ぎ、佐貫町(さぬきまち)を過ぎ、東京湾観音の裏を過ぎ、大貫を過ぎ、大貫海水浴場の浜に出たころは、西日が海を照らしていた。

国道から富津公園に入る角にコンビニがあった。

もう5時を過ぎていた。

ここで今晩の食事と、明日の朝食を仕入れる。


「もう、潮干狩りなんかやんないっ!豆がつぶれたから、海になんか入れないっ!」


あさりの網焼きなんか夢のまた夢である。

珍辰は、コンビニサンドイッチとコンビニカップめん。

屁散人は、夕食用に、コンビニ冷やしうどん、朝食用に、こんびにおむすび2個を買った。

焼酎、ウィスキも忘れずに仕入れ、まずはコンビニの外で缶ビールを飲んだ。

ここからは、もうそう遠くないはずだ。


     乾杯~~・・・


が、力弱い。

珍辰は、すでに両足の豆がつぶれている。

おっさん二人、脚をひきずり、ひきずりキャンプ場に着いたのは、5時40分を過ぎていた。

実質の歩行時間は、5時間半。

距離は、26,7キロといったところだろう。

松林の中のキャンプ場には、たくさんのテントが建設されていた。

どこにテントを張ってもいい、と言われても、その隙間を探すのが大変だった。

みな大きなテントで、寝室用と食事用と2つのテントを持っている。

われわれはソロテントであるからして、寝室も食事も一緒である。

なおかつ、テントの中では立つことが出来ないので、すべての作業を座ってこなさなければならない。

つまりは、んとこさ背が低いのである。

んだから、われわれのテントはどーしても、


     大邸宅街の掘立小屋


みたいに見えてしまうのだった。

ちょうど夕食時である。

あちらこちらから、いい匂いが漂って来る。


「珍ちゃんよ、みんな、網で海老とか、ホタテとか、肉なんか焼いてるぜ。んめそ~だぜ」

「いいのっ!キャンプにあんなのは邪道なのっ!」

「邪道でもなんでもいいから、海老食べたい♪」


二人ともテントの入り口から顔を出して、焼酎を飲む。

珍辰はコンビニサンド、屁散人は、冷やしうどんをすする。

大邸宅からは、煙にのって海老を焼く匂い、ホタテを焼く匂い、ステーキを焼く匂い・・・。


「やっぱよ~、邪道やりたいなぁ。こんな冷たいもん食ってるよかよ~、あったかいもん食いたいなぁ」


すかそ、珍辰は、コンビニ食事最高説を主張してやまないのだった。

かくして、わざわざ富津岬まで来ていながら、地元の物は一切口に入らず、屁散人は、ただただ虚しく、酔いに走るのであった。

左足に豆1個、右足には豆が2個生誕していた。

と思っていた。


                  (づづく)






[わーい(嬉しい顔)]昨日のお貯め(目標金額:69,800円! TEACのオーディオを買うのだ!)

  ・投入~♪=1,000円~♪ (おととい550円、昨日450円)

  ・あと~♪=28、943円な~りぃ~♪


富津キャンプ 024.JPG

富津キャンプ場。テントで夕食のコンビニサンドを主張する珍辰。






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あおばばばぁちゃん

相変わらず、お盛んな???ようでご同慶のいたり。

前に"ちょっとだけ"に参加して体験させて頂きましたが
千葉の道は確かに単調。
さて、どこを通って帰って来たか、明日の記事を楽しみにしてます。

by あおばばばぁちゃん (2010-05-03 10:21) 

屁散人

→あおばばばぁちゃん

久しぶりの長距離歩きだったので、ちと体ガタガタしちゃいました。
お豆の収穫はあったし、たくさん飲んだし、暑かったし、千葉の道は、もう、な~んつか、どよよ~んであったし・・・。
明日は一体どーなるんでしょかね。
ね~ん♪

by 屁散人 (2010-05-03 12:23) 

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