新日本屁行 鳥海3号
珍辰は、傘の内からしばらく雨を見上げていたが、とうとう結論を出したのだった。
「退却しよかね」
屁散人もそれがいいと思った。
霧が渦巻き、雨に降られてのこの寒さ。
上に登れば登るほど風は強く、寒さも激しくなるだろう。
戻るのがいい。
そーしましょ、ったら、そーしましょ♪ である。
ま、屁散人は自分の脚に自信がないからだけど。
だいたい、何でこんなに苦しい思いをしてまで山なんかに登らなくっちゃならんのだ。
( `д´) ケッ! 何が山ガールだ!
どこにそんなガールがいるんだ!
どしゃどしゃの雨ばっかじゃんけ!
ドシッ! ←机を叩いた衝撃で、屁散人がひっくり返った音
7合目、御田の雪渓↑を目の前にして引き返す。
下って再び6合目、賽の河原の雪渓を渡る。
ここでフェロ銀は2回尻餅をつき、屁散人は1回転大転倒で、したたかに右膝を打った。
んなのに、珍辰は、
自分だけ
簡易アイゼンを着けていた。
のだった。
一週間前の珍辰からのメールでは、
「装備・・特別な道具はいりません」
と言ってたのに、
自分だけ
アイゼンを用意していたのである。
あまつさえ、珍辰はメールで、
「陽射しは強いので日焼け対策を」
とまで書いていた。
え? どこに陽射しがあんの、陽射しがよー!
このビチャビチャ上から降ってくる冷たいもんが、陽射しっつーものなのけ?
と言いながらも、屁散人のお腹の中は大笑い♪
だって、もう、山登りなんつ苦しいことしなくて済むんだもの。
下ってゆくだけでいいんだもの。
下りは怖いけれど、心は綿菓子よりも軽~い。
ふぅわふゎ~~♪
賽の河原まで降りてきて、恨めしげに山を見上げる珍辰(右)とフェロ銀。
ところが、高度を下げるに従い、次第に晴れてきたではないか。
午前8時半、祓川ヒュッテに戻ってしばらくすると、鳥海山は頂上までくっきり日を載せていたのである。
「悔ぢーーーーいっ!」
珍辰もフェロ銀も顔いっぱい、精一杯に悔しがっている。
屁散人は、それが格別特別嬉しさいっぱい♪
こんなに嬉しいことはない。
山登りを続けなくて済み、無事生還したずぶ濡れ屁散人。
シャツを絞ると、ジョジョジョ~っと水がこぼれた。
喜びを隠せませんね♪
珍辰は、ヒュッテでタクシーを呼んだ(屁散人のケータイを使って)。
車が着くまで3~40分かかるというので、近くの散策路を歩いてみる。
展望台からは、キラリと晴れ上がった鳥海山が仰げた。
二人はなおも悔しそうであったが、屁散人はその爽やかな山容に見とれるばかり。
駐車場のコンクリに、濡れた長袖シャツを広げて乾かしていると、タクシーがやって来た。
今朝、ここまで送ってくれた運転手さんだった。
「○○大学の学生さんをここまで送ってきたんですがね、雨で30分後に迎えに来たことありますよ」
という。
我々は、山の中2時間だから、まぁまぁっつところか。
由利高原鉄道の矢島(やしま)駅には30分で着いた。
矢島駅売店の「マツコさん」に振る舞い水をご馳走になり、自分が折ったという着物の栞みたいのをいただく。
列車が出発するとき、マツコさんがホームで旗を振って見送ってくれたのには驚いた。
そすて、いっぺんでマツコさんが好きになってしまった。
由利本荘駅で羽越本線に乗り換え、小砂川まで行くのだが、待ち時間がたっぷりあるので、町の食堂に入った。
おばあちゃんが一人でやってる小さい店で、初老~中老~大老の男たち6~7人が、昼間っから飲んでいた。
ラーメンが380円だったので、3人ともラーメン!
フェロ銀は、
「ギョーザも食べましょかね」
「そーだね」
「すいません、ギョーザ2人前お願いしま~そ」
と言ったのだ。
我々は、どー考えても3人である。
3人にギョーザ2人前っつのは、いかがなものか?
確かに今回の旅のスポンサーは、珍辰とフェロ銀である。
んなのに、ここにきて、ちまちまと屁散人いじめにかかることはないではないか。
ギョーザの1皿くらい、ばばーーんとサーベソしてもいいではないか。
結局、屁散人は2人前12個のギョーザのうち2個しか食べさせてもらえなかった。
そすて、このギョーザ、どこかで食べたような味がした。
また、ラーメンは、蓮華で一口すすると、何とも言えない味がした。
んが、すすっているうちに、だんだん、んまく感じてきた。
「ラーメンは、ほれ、3食入っていくらっつ、マルちゃんのラーメンみたいだな」
「ギョーザは、ほれ、冷凍かなんか、スーパーで売ってるやつみたい」
ということで3人の意見は一致。
そーいえば、おじいさんが、ビール頂戴、というと、缶入りの発泡酒が出てきた。
みんなニセモノといえばそーなんだけど、これだけ徹底しており、お客もみんなそれを知っていて、集まってくるのだから、「スキマ商売」と言ってもいいかもしない。
由利本荘から小砂川まで、珍辰は、列車の窓にアハハハゲをぴったり付けて、鳥海山を見ていた。
「ほ~ら、ほ~ら、鳥海山が雲かぶってますよ~。あの中は、雨ね、雨ですよ~、ヒヒヒ、アハハ♪」
晴れていたはずの鳥海山にいつしか雲がかかっていた。
それも、薄い雲ではなく、雨をたっぷり含んだような大きな雲だ。
「だから、言ったではないですか。山の天気は変わりやすいってね。だからワダクス珍辰の判断はしぇいかいだったのです。え? あの雨の中を無理して登ったら、どーなっちゃってると思います? たとえ一時は晴れていたとしても、ほ~らあの雲をご覧なさい。遭難確実、そうなんです♪ (^凹^)、ヒヒヒ、雨だよ雨、あの雲ん中~♪」
雲をかぶった山に、これほど喜んだ珍辰を見たのは初めてである。
おはり
この写真を撮ったあと(自分では撮ったという意識はない)、カメラを水に落としてしまった。
すぐさまフェロ銀がすくい上げてくれたのだけれど、ついに作動せず。
よって、これが今回の旅の最後の写真であります。
あ~あ……。
因みにカメラは、旅から帰った翌日復活してくれました(ホッ)♪
第9弾 昨日のお貯め(○○を買おう! 8月16日開始)
お投入=118円~♪
ご累計=1,487円~♪
■昨日のあんよの歩き(目標1時間以上!)
15分
・ご近所ね
2013-08-30 15:24
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コメント(4)
ふふ、これで誰が雨男か判明したね。
遭難せずに済んだだけども素晴らしい。下りてからのビールが美味しかったでしょうから、それでめでたしめでたし。
by あおばばばぁちゃん (2013-08-30 17:41)
山ガールじゃなくて、雪女がいつ出てくるかと、ドキドキしながら読んでいました。
ご無事の生還、おめでとうございます。
by めざぽん (2013-08-30 20:53)
→あおばばばぁちゃん
ぬはは、雨男・雨女が輻輳して誰が誰だか分かんなくなっちゃった。
相乗効果っつのもあるだろうし……。
降りてから、列車でぐるり鳥海山を半周して、湯の田温泉に止まりました。
海のすぐそばの旅館で、海鳴りを聞きながらのビールでありましたよん。
by 屁散人 (2013-08-31 08:17)
→めざぽんさん
あい、なんとか無事に帰ることができました。
山・昔ガールには数人遇いましたけど、デートを申し込む勇気は出ませんでした。
怖かったのは雪庇から岩に飛び移る時で、雪庇が崩れやしないか、岩に移るとき、下に落ちやしないか、ビビリもんでありました。
山はやっぱ怖いよね。
by 屁散人 (2013-08-31 08:23)