『われら中年ちょっとだけ探検隊!』 三国山の巻
「諸君、諸君、諸君んんっ~~~~~!」
国府津から御殿場線に乗り換えると、珍隊長、ジュエリ・八王子、犬客がボックス席を占領していた。
屁散人が乗り込んだ途端、珍隊長が叫んだのである。
声の大きさとは裏腹に、喜び隠せない表情がありありと見て取れる。
「見よ! この快晴の雲の全くない、青空の快晴を!」
「みんなさっきから見てるじゃんけ」
「じゃないっ! この快晴のなんという清々しさ♪ 諸君もたっぷり味わうのだった」
「あいよ」
「なぜにかよーに気分がいいのか、諸君には分かるまい」
「あのババどもが今回は参加しないからだろ」
「声が大きいっ! あのババ……お姉さん方に聞こえたらどーすんの。それでなくても地獄耳、何をされるかわかったもんじゃない」
「んな、あんなババなんか放っときゃいいじゃんけ、なにビクビクしてんのー、隊長のくせに」
珍隊長、朝から上機嫌である。
今回は、あおばばばぁちゃん、あめどん、コケコッコの3女子(過去の)隊員が参加しないからである。
この上機嫌は、隊長だけではなく、ジュエリも犬客も同じである(屁散人だけは悲しんだ)。
あの3人が加わると途端に話がややこしくなる(と屁散人以外は言う)。
みんなそのややこしさが身にしみているのである(屁散人は違う)。
御殿場駅を静かに発射した……発車した列車は、松田でトウキョから来たキクおじさんを取り込んで、全員集合、いざ御殿場駅に向かった。
「いや~、小田急線に乗ってきたら、富士山がくっきりよく見えましたよ」
とキクおじさん。
珍辰はそれを聞いて、深くうなづいている。
なんつたて、珍隊長が計画した今回の山行のご馳走は、富士山や周辺の湖とかなんやかやらの眺望であるからだ。
出足は快晴!
珍隊長にしては、珍しく快調な出足である。
これならば、今までの汚名の返上は確実である(だろう)。
珍辰のるんんるんハゲ光線は絶好調、998LEDにまで上がっていた。
屁散人が今回参加したのは、今年の『われら中年ちょっとだけ探検隊!』には一度も参加してないので、この一年で、珍隊長がどれだけ成長したかを確認するためである。
今のところ、珍隊長、ある程度の成長は遂げているようだ。
御殿場駅に降り立つと、富士山が近いためもあるのだろう、ぐぐーーーんと冷えを感じる。
さすが霊山である。
しかし、
「あのさ、富士山に雲が……」
先程まで快晴こいていた空なのに、御殿場につくと同時に、富士山に傘雲がかかった。
「おかしーなー、おかしーなー」
珍隊長、早くも腰砕け模様である。
今日は、籠坂峠からアザミ平~大洞山~三国山~明神山というハイキングコースである。
屁散人のような、山知らず子知らずの人間でもラクラク歩ける気持ちの良いコース。
珍隊長、みんなに眺望絶景を見せようと張り切っていたのだ。
そのために、前々日の悪天候を予想し、わざわざ今日24日に予定を変更したのだった。
ほいだのに、全天周囲眺望だらけ、るんるん明るい家族計画に、早くも暗雲が寄せてきた。
バスに乗り込むと、太陽は姿を消し、先ほどの快晴はどこへやら、
「うむむ! これはあの3ババの呪いに違いないっ! 我々にいい思いをさせないように、呪いをかけたのだ!」
と珍隊長の鼻息が荒くなった。
ジュエリも犬客も大きくうなづく(屁散人は、首をキッパリ横に振った)。
キクおじさんは、冷静に知らんぷりしている。
バスが籠坂峠に着くと、まずは記念撮影。
すかそ、
「あれ~、これって雪でなくね?」
目の前をチラチラするのがトナカイではなく、雪だと分かるまで3秒しかかからなかった。
落ち葉の降り積んだ、ふかふかの山道をゆったり登るのは気持ちよかったけれど、雪が次第に本格的になって来た。
山道が白くなってくる。
当然、眺望なんかきかない。
はずだが、行く手左には、青空があり、その下には澄んだ青い色の山中湖が見えている。
「あのよ、珍ちゃんよ、これってオレたちんとこだけ雪降ってるっつことじゃないの?」
「えへへ、さようでございますな♪ 我々だけが大儲け、丸儲け、ぼーずハゲ儲け、みたいな、あはは、アハハ~♪」
この一年、珍隊長は全く成長してなかった。
笑ってその場限りのごまかしを言うのは、以前と全く変わってなかった。
「で、眺望は、眺望はどしたの?」
「あはは、さいでございます、眺望はかつて眺望だった、な~んつて、アハハ、アハハ~~♪」
「何言ってんだよ、ったく!」
10時15分に籠坂峠を出発した我々が三国山山頂に着いたのは、12時半近かった。
雪は本格的になっていた。
長椅子に腰掛けて、リュックを開けると雪が吹き込んでくるが、全く溶けない。
気温が氷点下に下がっているからだ。
すぐに弁当にする。
弁当は、コンビニで買ったおむすびや、カップラーメン、パン、駅弁などだ。
後で聞いたら、ジュエリのご飯は半分凍っていたという。
珍隊長やジュエリは携帯コンロでお湯を沸かす。
犬客やキクおじさんは、携帯ジャーに熱い飲み物を入れて持ってきている。
ただひとり、屁散人だけは、凍ってシャリシャリ音のするペットボトルのお茶を、凍えながら飲んでいた。
すると、
「お湯やろかぁ~」
と珍隊長が言う。
これは親切からではない。
屁散人が御殿場でウィスキーのポケット瓶を買うのを、珍辰は横目で見ていたのだった。
熱いお湯を飲ませてやる代わりに、ウィスキーをよこせ、というのだ。
お湯にウィスキーをたらすと、胃の腑にじゎ~~っと熱いものが染み渡った。
それを珍辰も飲む。
悔しいけれど、あまりの寒さで文句も言えない。
雪ばかり無眺望だらけの山頂には、30分もいられなかった。
指が凍って、痛いを通り越し、感覚がなくなっている。
凍傷になって指切断かと、まじにヤベっ、と思ったほどだ。
んだもんで、当初の予定だった明神ヶ岳はパスして、三国峠に降りた。
そこから少し下ると、もう、雪は降ってなかった。
道に雪も積もってない。
あまつさえ、向かいの山には日が当たってるではないか。
「何だったんだ、あの雪は」
というのが、皆の共通した意見。
手袋なしでも指が冷たくない。
富士山を真向かいに置いて皆を感激させよう、という珍辰の独りよがりは雪に閉ざされ、富士は、結局、裾野のスカートをちらりとめくって見せただけだった。
「紅富士の湯」で一風呂浴びて外へ出ると、寒林の向こうに頂上を見せた富士が立っていた。
「ほぅら、ほぅら、富士山が姿を見せたじゃありませんか、ね、ちゃ~んと計算してるんですよ、隊長たるものは!」
と珍辰はジュエリにだけ自慢してみせたが、その富士は黒々としたシルエットを見せるばかりで、やがて何事もなかったように、夕闇の中に消えた。
夕食は、富士山駅ちかくの吉田うどん店で食べた。
屁散人が、鹿肉入りのカレーうどん(絶品!)を食べていると、
「替え玉頼もうかなぁ」
と犬客が言う。
犬客は、すでに肉うどんを汁まで啜り終わっている。
「屁散人のカレーうどん、汁が残ってるでしょ。それに替え玉入れて食べんの」
屁散人が汁の一滴も残さず食べたのは、言うまでもない。
眺望抜群の三国山山頂で、雪に凍えながらの昼食。
左より、キクおじさん、犬客、珍隊長。
山を降りてみれば、な~んだこりゃの好天。
澄んだ山中湖が我々をお出迎え。
第6弾 昨日のお貯め(ガスレンジを買うぞ! 目標35,000円 8月30日開始)
お投入=0円~♪
ご累計=17,762円~♪
■昨日の運動(1月1日より 目標年間通算各10,000回!)
・腹筋=0回 通算=240回
・腕立て伏せ=0回 通算=390回
・背筋=0回 通算=280回
■昨日のあんよの歩き(目標1時間以上!)
3時間20分
・籠坂峠~アザミ平→大洞山→三国山→三国峠→山中湖畔
・屁見庵→JR横須賀駅
2012-12-25 18:29
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コメント(2)
冬山の現実をちょこっと体験できた、今年を締めるにはいい山行でしたねぇ。それにしても写真のお三方は見た事もないくらいにしょぼくれてます。
山は寒そうだし、うどんは美味しそうだし、行きたかったな。
by あおばばばぁちゃん (2012-12-26 08:42)
→あおばばばぁちゃん
あい、なかなかに寒かったです。
みんな一応冬装備をちゃんとしてきたので持ちこたえましたな。
指は、んとに冷たかったよ。
食事するところに屋根があれば最高だったけど、まぁ、無事に帰れただけで御の字でしょね。
「えきまえ」のうどんは、手打ちでしっかりしていて、んまかったぁ~♪
by 屁散人 (2012-12-27 06:49)